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冠動脈疾患

治療について

冠動脈疾患の治療について

冠動脈疾患の治療法には、小さなバルーンカテーテルやメッシュ状の金属性ステントを冠動脈内に挿入して血管を拡張する経皮的冠動脈形成術と、手術によって患者さんの別の部位から採取してきた健康な血管を、冠動脈の病変部につなぐ心停止下冠動脈バイパス手術(CCAB)と呼ばれる外科的治療があります。さらに低侵襲な外科手術として、日本では心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)が積極的に行なわれています。

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冠動脈バイパス術とは

冠動脈バイパス術とは

冠動脈バイパス手術は、内科的治療では十分な効果が得られない複数の冠動脈に狭窄を持つ患者さん、長期間の冠動脈閉塞を持つ患者さんや再狭窄を繰り返す患者さんなどに行われます。この治療は、狭窄や閉塞した病変部の先に他の部位の血管を繋いでまわり道(バイパス)をつくる方法です。

冠動脈バイパス手術とは、閉塞している冠動脈の先に別の血管をつなぎ(吻合)、血液がその道(バイパス)を通るようにする外科的手術法です。バイパスから より多くの血流が確保されることにより、心筋の血流不足(酸素不足)による狭心症が改善され、さらには心筋梗塞を予防することができます。

このバイパス手術には、人工心肺装置を用いて心臓を止めて行う心停止下手術のほかに、人工心肺装置を使用せず心臓が動いたまま行う心拍動下冠動脈バイバス手術の方法があります。

心臓を止めて行う前者の方法は、歴史も長く世界的にも広く普及していますが、人工心肺装置の使用に伴うリスク(脳梗塞や出血の危険)は避けられません。

一方、後者の心拍動下バイバス手術は、人工心肺を使用しないことからオフポンプ法、またはOPCAB(オプキャブ)手術とも呼ばれており、90年代後半 から急速に普及し始めました。この方法では心臓が動いたまま(拍動下)の状態で微細な血管を吻合するため、外科医には高度な技術が求められますが、人工心肺の使用に伴うリスクを回避することができるという利点があり、現在国内のバイパス手術の60%以上がこの方法で行われています。 では実際にどうやって心臓が動いたままで手術をするのでしょうか。

Two types of graft bypasses

OPCAB手術はどのように行われるのですか?

まずバイパスに使われる健康な血管(動脈か静脈)を胸部や足などから採取します。この血管はグラフトと呼ばれ、閉塞した冠動脈病変部分の上部、または下部に吻合します。グラフトが吻合されると血流が直ちに確保され、心筋に十分な酸素を供給できるようになります。

この時、約1~3mmの冠動脈に髪の毛よりも細い縫合糸を用いてグラフトを吻合しますので、心臓が動いたままでは非常に難しい作業になります。そこで、 吻合部位をできるだけ固定させる「スタビライザー」、心臓を持ち上げて吻合部位を見やすくする「ハートポジショナー」と呼ばれる器具が開発されました。そ の後改良された器具(下記図)が日本でも普及し、OPCAB手術が盛んに行われるきっかけになりました。

                                                                                   OPCAB手術で使われる器具

効果とリスク

日本では心臓を動かしたまま手術をするOPCAB手術が盛んに行なわれ、病院によっては殆どのバイバス手術をほぼOPCABとしている病院もあります。その理由として、人工心肺装置を使用する際に血管に穴を開けたり触ったりすることで血管内のプラークがはがれ飛んで脳梗塞を引き起こす可能性や、血液が異物と接触することで炎症が起こり、術後の臓器障害の原因になるとされたからです。それらのリスクを回避するため人工心肺装置を使用しないOPCAB手術が注目され普及が進みました。しかしながら、OPCAB手術でも外科手術としての効果とリスクはありますので、以下の項目を理解してから手術をうけることをお勧めします。

OPCAB手術の効果

高齢者、腎不全等のハイリスク患者での早期死亡リスクが低い

  • 術後の脳障害発生頻度が低い
  • 術後の腎機能障害発生のリスクを軽減する
  • 入院期間が短く、出血量、血液製剤の使用が少ない
  •  

    OPCAB手術のリスク

  • 出血による再開胸
  • 感染症
  • 血液透析
  • 呼吸器疾患、縦隔炎
  • 手術による死亡
  •  

    また下記条件がどれだけ当てはまるかによって、その患者さんのリスクが決まります。

    • 年齢(70歳以上)
    • 術前の健康状態
    • 緊急手術の場合
    • 喫煙
    • 低心拍出量症候群
    • 糖尿病
    • 慢性肺疾患
    • 慢性腎疾患

    しかし上記リスクが懸念される場合でも、適切な時期を考慮し術前評価と適切な手術計画ができればOPCAB手術も可能な場合がありますので、医師とよく相談してください。

    Q&A-冠動脈バイパス手術

    医師から「従来のバイパス手術よりもOPCAB手術が適している」と言われました。その違いは何でしょうか?

    一番の違いは、手術中に人工心肺装置を「使用する」か「使用しない」かという点です。従来の手術では心臓を止めて行なう必要があります。そのため人工心肺装置を使用することになりますが、それによって合併症のリスクが高まることは、前ページで解説したとおりです。

    OPCAB手術中に、人工心肺装置を使うことはありますか?

    本来は人工心肺装置を使わずにできる手術ですが、緊急時にはいつでも使えるよう手術室に準備はされています。手術中に外科医が使用したほうがより安全であると判断した場合、ただちに心臓を止めて人工心肺装置を使用して手術を続けることがあります。

    手術をしても冠動脈がまた閉塞することはありますか?それはどうやって知ることができますか?

    残念ながら血管が閉塞する可能性はあります。もし閉塞してしまったら、手術前に経験されたような胸痛や息苦しさをおそらく感じることになります。特に運動や仕事をしている時にそのような症状があれば、すぐに医師へ相談してください。

    経皮的冠動脈形成術とは

       

    本サイトの内容は、医師の診察に代わるものではありません。病状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。