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症状は息切れ、
胸の痛み?
大動脈弁狭窄症の
症状と治療法

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心臓の仕組みと働き

心臓の大きな役割は、体のすみずみまで酸素や栄養分の入った血液を送り出すことです。毎分60~100回、一定のリズムでポンプのように収縮し、1日に10万回程度休まずに血液を送り出しています。
心臓の右側の部屋は、全身から戻った血液を受け取って、肺に送ります。
心臓の左側の部屋は、肺から酸素の入った血液を受け取って、全身に送ります。

心臓の仕組みと働き(イラスト)

心臓弁膜症とは

心臓には4つの部屋があり、4つの部屋の出口にはそれぞれ弁がついています。弁は、心臓の拍動に合わせて閉じたり開いたりして、血液の流れが逆流しないようにするとても重要な存在です。

  1. 大動脈弁は、全身 (肺を除く) への血流をコントロールします。
  2. 肺動脈弁は、肺への血流をコントロールします。
  3. 僧帽弁と三尖弁は、心房から心室への血流をコントロールします。

血液の逆流を防ぐための弁が正常にはたらかない状態を「心臓弁膜症」といいます。
心臓弁膜症には、弁がうまく閉じられずに血流が逆流する「閉鎖不全」と、弁がうまく開かずに血液の通り道が狭くなって血流が逆流する「狭窄」があります。いずれも大動脈弁と僧帽弁に多い病気です。

心臓弁膜症とは(イラスト)

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁は、心臓の「左心室」と「大動脈」の間にあり、心臓から全身へ血液を送り出す時に最後に通過する重要な弁です。
この弁が加齢とともに石灰化などが生じて硬くなり、うまく開かずに血液の通り道が狭くなる状態を「大動脈弁狭窄症」といいます。

大動脈弁狭窄症とは(イラスト)
重症になり、大動脈弁の開閉が悪くなればなるほど血液の通り道は狭くなっていきます。
その状態で血液を送ろうとすると、血液を押し出す力に対して出口が狭く、血流が阻害されてしまうため、心臓の圧力が上がって、大きな負担がかかることになります。
ホースの先をつまむと、ホースの内部に圧がかかって水の勢いが変わりますが、それと同じようなことが生じているイメージです。
正常な弁(イラスト)

正常な弁

弁が狭くなった状態(イラスト)

弁が狭くなった状態

原因

大動脈弁狭窄症の原因には次のようなものがあると考えられますが、なぜ狭窄が進行するのかはまだ厳密に明らかになっていません。

  • 年齢(加齢)
  • 大動脈弁の肥厚、線維化
  • 石灰化(カルシウムの蓄積)
  • 心臓の感染症

症状について

大動脈弁狭窄症は、軽症のうちは症状がほとんどありませんが、重症になると左心室から大動脈、さらに全身へ血液が十分流れなくなるため、様々な症状が現れます。
症状が加齢によるものと似ていることから「年のせいだろう…」と見過ごされることも少なくないので、注意が必要です。
以下の症状チェックリストをご参照ください。

症状チェックリスト

胸が痛い

胸が痛い症状

めまいがする

めまいがする症状

すぐに息が切れる

すぐに息が切れる症状

ドキドキする

ドキドキする症状

気を失うことがある

気を失うことがある症状

横になると息苦しい

正常な弁(イラスト)

脚がむくむ

脚がむくむ症状

体がだるい・疲れやすい

体がだるい・疲れやすい症状

病気の進行について

通常、大動脈弁は3つの弁尖と呼ばれる薄い膜で構成されていて、それが心臓の拍動に合わせて適切に開閉しています。
病気(狭窄)が進行すると、左心室から大動脈、さらに全身へ血液が十分流れなくなるため、様々な症状が現れます。

治療法について

ハートチーム (循環器内科医、心臓外科医、放射線科医、麻酔科医、および必要に応じて他の医師が含まれる専門的な治療チーム) が、次の治療オプションのうち、どれが患者さんに最適であるかを決定します:

薬物治療(軽症の場合)

弁の狭窄が軽症の場合は、経過観察を行ったり、お薬で症状をおさえる治療を行います。
ただし、薬物治療は悪くなった弁を元に戻す治療ではありませんので、定期的に検査と診察を行うことが重要です。
狭窄の度合いが重症化すると、「外科的治療」や「経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)」による治療が必要になります。
適切なタイミングで適切な治療を行うためにも、定期的に受診するようにしましょう。

■大動脈弁狭窄症の薬物治療に使われる主なもの

種類 はたらき

強心薬

心臓の収縮力を高め、血液が全身にいきわたる手助けをします。

利尿薬

体内の余分な水分を尿として出し、心臓にかかる負担を減らします。

血管拡張薬

動脈や静脈を広げて、心臓にかかる負担を減らします。

抗血液凝固薬

血栓(血の塊)ができないように、血液を固まりにくくします。

降圧薬

心臓から送り出す血液の量を減らしたり、血管を広げて、血圧を下げます。

抗不整脈薬

心臓のリズムを整えます。

バルーン大動脈弁形成術

小さなバルーン(風船)を大動脈弁内で膨らませ、狭くなった血液の通り道を広げます。この治療法では、一時的に症状は改善しますが、再び狭窄してしまう可能性があります。

外科的大動脈弁置換術

開胸して狭窄した弁を除去し、人工弁(機械弁や生体弁)に置き換える手術です。 患者さんは通常、1週間以上入院する必要があります。
外科的大動脈弁置換術に関する詳細は、こちらからご確認頂けます。

■外科的治療に使われる人工弁(機械弁)

   

素材

金属(パイロライト・カーボンやチタンなど)

耐久性

20 ~ 30年(ほぼ一生涯)

手術後の
抗血液凝固療法

弁のまわりに血栓ができやすい。
生涯にわたって抗血液凝固療法を行う

■外科的治療に使われる人工弁(生体弁)

   

素材

牛または豚の心臓からとった組織

耐久性

10 ~ 20年

手術後の
抗血液凝固療法

弁のまわりに血栓ができにくい。
抗血液凝固療法は手術後2 ~ 3 ヵ月程度(病院によって異なります)

※抗血液凝固療法:血液が固まらないようにする治療。抗血液凝固薬や抗血小板薬を服用する。 

経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)

TAVIは、脚の付け根や鎖骨の下などの動脈から、カテーテルと言う医療用の細く柔らかい管(くだ)を差し込んで、生体弁を心臓まで届けて植込む治療法です。
TAVI は外科手術と比べて体にかかる負担が小さい(低侵襲)とされており、個人差はありますが入院期間は外科手術より短くなることが多いです。日本では2013年から行われている比較的新しい治療法で、まだ長期成績のデータが十分には蓄積されていません。

TAVI 手順の詳細については、こちらをご覧ください。

大動脈弁狭窄症の治療法はどのように決定されますか?

ハートチームはそれぞれの患者さんに応じた最良の治療を選択するために、必要な検査を実施していきます。

<代表的な検査>

  • 症状と身体所見
  • 聴診
  • 心エコー図検査
  • 心臓カテーテル・CTスキャン・MRI検査
  • 血液検査

これらの検査により医師は次のことがわかります。

  • 心臓の形、大きさ
  • 大動脈弁狭窄症の重症度
  •  血管の構造や状態
  •  その他の医学的問題の有無 

こうした検査や所見を元に、患者さんの希望も含めて最善の治療を選択していきます。

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