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イノベーション
メドトロニック社員が発案したアイデアを、株式会社日立ソリューションズ様、株式会社日立ソリューションズ・クリエイト様とともに具現化した「HoloMe」。開発に携わった各社の担当者にお集まりいただき、アイデアの誕生から、協働、ローンチに至るまでのお話を伺いました。
メドトロニック:手術中、「器械出し」業務を担う看護師は、医療機器の正しい使用方法を熟知し、正確かつ素早い組み立てと操作が求められますが、医療業界では看護師向けのトレーニング教材は潤沢ではありません。近年の医療技術の高度化や労働時間など様々な課題から、医療機器の使用方法などの学習を効率的に行いたいというニーズが高まっています。
メドトロニック:器械出し業務は熟練者と非熟練者で習得状況に大きな差があります。現状では熟練看護師が業務時間外に、非熟練者にきめ細く指導する場合もあり、業務負荷の軽減が課題となっています。特に脊椎手術に使用される器械は構成部品が多く、使用方法も特殊です。メドトロニックには元看護師の社員もおり、脊椎領域を担当する社員らを中心に、医療機器メーカーとして何かできることはないかという声が常々上がっていました。
日立ソリューションズ、日立ソリューションズ・クリエイト(以下、日立):日立中央研究所で開催された学会で、メドトロニック様の展示ブースがたまたま弊社の斜め向かいだったのです。試しに弊社のホロレンズを装着していただいたところ、「これはおもしろい」という話になり、この学会がきっかけで3社協創プロジェクトが始動しました。
メドトロニック:我々が注目したのが視覚を追跡する「アイトラッキング」機能です。器械出しの熟練看護師は、執刀医に器械を差し出すタイミングが的確で、先の手順を見越して目配りをしています。この目線を外見から追うのはとても難しいのですが、MR技術を活用すれば、熟練看護師の目線を可視化できるとご提案いただき「これだ!」と確信しました。
日立:メドトロニック様は熟練看護師の目線の動きを可視化して録画し、教育教材として活用するという明確な目的をお持ちでした。そこでアイトラッキング機能を軸にしたトレーニングツールを、一から開発することになりました。ただ、日立ソリューションズグループでは、医療業界へMR技術の適用事例がほとんどありません。今回の取り組みは我々にとっても過去に例のないチャレンジでした。
日立:医療業界の中でも手術室という環境はかなり特殊です。我々には想像もできないニーズが次々と出てきて、最初は驚くことばかりでした。工夫した点は、要件定義などのプロジェクトがスタートする前から開発の方向性を固め、開発チームがすぐに実装に取りかかれるように準備を徹底したことです。ブレーンストーミングの時間を長めに取り、メドトロニック様が必要とする機能をどうすれば実現できるか、一つひとつ落とし込んでいきました。
日立:医療業界により適したソリューションにすることです。今回の開発で最も重要なのは、看護師の目線情報を録画することでしたが、最初の頃は、なぜ目線の先を示すマークの色や形が重要なのかピンときませんでした。ディスカッションをする中で、マークが赤色だと血液や術野の色と同化してしまうという理由を知り、録画の途中でも色を変更できるようにしました。さらにマークの形も選択可能にするなど、細かい調整を丁寧に実行しました。
日立:多忙な医療従事者の皆様が、忙しい合間を縫い医療機器の使い方を学ばれていて本当に驚きました。医療現場の負担を軽減したいというメドトロニック様の想いも、現場に行くことでよく理解できました。同時に、メドトロニック様が医療従事者の皆様からとても信頼されている企業であることも実感できました。そういう企業と医療に貢献できるソリューションを共同開発していると思うとモチベーションも上がり、共に開発に挑むチームとしての一体感もより一層強くなりました。
日立:開発は現場の看護師さんの声を反映して進めました。看護師さん向けのデモンストレーションに参加させていただき、「これはいいね」「分かりやすい」といった声を直接聞けて、このツールの有効性を実感できました。
メドトロニック:実際にHoloMeを装着した看護師さんからは「若手の教育はもちろん、経験を積んだ看護師の業務改善にも役立つのではないか」といったコメントもいただいています。
日立:ヘルスケア領域での技術活用は、日立グループ内でも大きな注目を集めています。HoloMeはアイトラッキング機能を活用したトレーニングツールですが、それ以外にも応用できる可能性を感じています。例えば、MR技術を活用した力触感*への展開など、医療の発展に寄与するアイデアを今後も一緒に考えていければと思います。
メドトロニック:まずは脊椎手術以外の診療科へ対応を拡大していくことです。メドトロニックとしては、弊社の機器を正しく、安全に使用していただき、患者さんの健康回復に寄与するために、どのような取り組みができるかを考え、他社様のご協力もいただきながら取り組んでいきたいと思います。
*物を触った際などに感じる「力の感覚」と、「触る感覚」を合わせた言葉。