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患者さんストーリー
宇野 昭正さん
最初にふらつきの症状が出たのは今から約20年前です。60歳を過ぎた頃から、めまいやふらつきといった症状が時々ありましたが、日常生活に支障はなく、趣味のマラソンやトライアスロン、ゴルフも普通にできていました。
数年後、朝トイレから出ようとした時に失神して転倒し、顔面を骨折した頃から、体の異変を自覚するようになりました。その後も失神による転倒が2~3回続き検査したところ、不整脈の一種である「洞不全症候群」と診断され、医師からペースメーカの植込み手術を勧められました。ペースメーカがどういうものなのか、それを入れたら生活がどう変わるのか、資料を取り寄せて自分なりに勉強しました。
正直なところ、手術への恐怖よりも「趣味のマラソンやトライアスロンができなくなるのではないか」という不安の方が先に頭をよぎりました。従来型のペースメーカの場合、「水泳以外の運動は問題なくできる」と説明されましたが、トライアスロンは「スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)」の3種目を連続して行う競技です。水泳ができなければ、トライアスロンを諦めるしかありません。私はトライアスロンをどうしても続けたかったので、手術は見送ることにしました。
そうと決めたものの、いつ失神やめまいが起こるかわからない状況に、全く不安がなかったわけではありません。特に車の運転中に失神が起こると、大事故につながりかねません。運転中は特に慎重に、常に細心の注意を払っていました。家族や周りの人たちはとても心配していたようですが、従来型のペースメーカを植え込む気にはどうしてもなれませんでした。
幸い、しばらくしてリードレスペースメーカが保険適用となり、日本でも使用が可能になりました。以前に先生からリードレスペースメーカについて聞いていましたので、「待った甲斐があった」と思いました。トライアスロンの継続が可能なこと、手術前と同じレベルの生活や活動ができること、術後の副作用などについて改めて主治医に確認し、「これならば」と納得した上で、手術を受けることに決めました。
手術に対する不安は少しありましたが、リードレスペースメーカを植え込めば不整脈が改善し、失神が起きなくなることへの期待の方が大きかったです。実際、術後から現在に至るまで、失神はもちろんふらつき、めまいも一度も起こっていません。
手術の翌日には普通に歩けましたし、3日目には退院できました。退院後は体調をみながら、マラソンやトライアスロンの大会への復帰に向けて、徐々にトレーニングを再開しました。
不安の種だった失神のリスクがなくなったことで、生活の質は大きく向上しました。車の運転が心配なくできますし、スポーツや運動も変わらず続けられることが一番うれしいです。
優秀な陸上選手だった兄の影響もあり、私は子どもの頃から走ることが大好きでした。社会人になってからは転勤も多かったのですが、転勤先で地域のスポーツクラブや同好会に入り、地元の人たちと一緒に練習したり、観光を兼ねて町の中を走ったり、とても楽しい時間を過ごしてきました。海外旅行先でも走ることを通じて交流が生まれるなど、忘れられない思い出がたくさんあります。私にとって走ることは生活の一部なんです。
不整脈の症状が出始めたのは、ちょうどハーフマラソンやフルマラソン、トライアスロンなどの大会に出る練習に力を入れていた頃でした。加えて、伴走ボランティアの活動も平行して行っていましたので、体はきつかったですが、走ることをやめようとは一度も思いませんでした。
病気になってからも運動は常に続け、100kmウルトラマラソンなどにも挑戦していました。自分で走る以外にも、2007年から視覚障がい者の伴走ボランティアグループで活動しています。マラソン大会に出場した際、目の不自由な方が伴走者と一緒に走っていらっしゃる姿を見て、自分もお手伝いができればいいなと思ったことがきっかけです。
ボランティアを始める前に講習を受け、目の不自由な方に安全に走っていただくための伴走法などを学びました。初めて伴走した方が70kmのマラニックに出場される際も伴走を引き受けました。練習から当日までNHKの密着取材を受け、その様子は全国放映されたんですよ。その日はどしゃ降りの雨で、レースの途中で突然目の前に蛇が現れるなど、ハプニングもありましたが、無事に完走され一緒に喜んだことを今でもよく覚えています。
そんなふうに皆さんに喜んでもらえて、感謝までしてくださるのがうれしくて、私の方が生きる元気や勇気をもらっています。リードレスペースメーカのおかげで不整脈が改善したことを心から喜んでくださる仲間のためにも、走れる限りは現役で、これからもずっと伴走し続けたいと思っています。今後の目標は少なくとも80歳までは大会に出場し、92、3歳までは元気であればマラソンも続けたいです。
*上記の患者さん体験談は、実在する患者さんに対し、メドトロニックがインタビューを実施し、書き起こしたものであり、疾患および治療に対する個人の感想となっております。他の方が同じ治療を受けた場合に、必ずしも同じような治療結果を得たり、感想をお持ちになることを保障するものではなく、個人差があることを予めご了承下さい。