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患者さんストーリー
加藤 桂一郎 さん
病気が分かる約半年前から頭痛が続き、もともと片頭痛もちで高血圧の持病もあったので、「それが原因だろう」と、薬を飲みながら痛みを我慢して仕事をしていました。ある日、強烈な頭痛とともに右の瞼が全く開かず、眼球や瞳孔も動かない状況となり、これは「普通ではない」と思いました。
中国の大連に駐在中で、最初の検査は現地の大学病院で受けました。結果、ピンポン玉くらいの瘤があり、医師からは一刻も早く開頭手術が必要と言われました。日本での再診察・治療を強く希望したものの、コロナ禍のロックダウン中だった中国では、移動に厳しい制限がありました。日本への航空便も限られる中、航空券の予約はほぼ不可能。医師からは「飛行機での移動は大変危険で許可できない」と止められました。
その後、会社の中国人スタッフの努力によって、運よく航空機の座席は確保できましたが、中国での開頭手術か、命の危険を承知で帰国するかの選択を迫られました。最終的には「どうせ死ぬなら日本がいい」と思い、日本への帰国を選びました。
帰国後の検査で、右脳に約25㎜程度の大きな動脈瘤があることが分かりました。私の動脈瘤は従来の開頭クリッピング術はできない場所にあり、フローダイバーターという機器を用いた血管内治療ができる大学病院を紹介されました。その日のうちに医師同伴で救急搬送され、病院到着後に再度、搬送先の医師から詳しい説明を受けました。
開頭手術に比べると低侵襲な手術で、体への負担が少なく、術後1週間程度で退院する人もいると聞き、そんな方法があるならぜひやってもらいたいと思いました。何よりも目が治るかもしれないという希望が見えて、少し安心したことを今でもよく覚えています。手術への不安というよりは、この先生方にすべてお任せしようという気持ちでした。
手術は約1時間で終了し、「麻酔でいつの間にか眠って、目覚めたら終わっていた」というくらいの感覚でした。
手術を受けて動脈瘤が小さくなれば、視神経の圧迫がなくなり、すぐに目が見えるようになると思ったのですが、回復までには少し時間がかかりました。徐々に治ると医師から説明を受けたものの、内心は不安でした。片目だけでは運転ができないし、中国での仕事復帰も困難だと思ったからです。
目が動かない時間が長くなれば、さらに回復が遅れるのではないかと心配で、退院後は右の目を指で開いて動かすようにしました。動画も撮影して、目の状態を毎日確認していると、ある日突然ほんの少しだけ動いたんです。その後も自己流のリハビリを続けて、3ヶ月後の診察では全く開かなかった右眼が半分ほど開き、眼球がしっかり動くようになるまで回復しました。
その頃には、脳動脈瘤はほぼ消滅するほど小さくなっていました。主治医の先生も一緒に喜んでくださって、ようやく元の生活に戻れる実感が湧きました。
手術から約半年後には中国に戻り、職場に復帰しました。長年悩まされていた頭痛も、今は全くありません。一番うれしいのは、以前のように目が見えるようになったことです。不思議なものですが、病気をする前より今の方が、気持ちがより前向きになった気がしています。
実は、私は幼馴染みを同じ病気で亡くしているのです。あまりに突然のことで、友人の死をなかなか受け入れることができませんでした。命の危険を承知で、日本での治療を希望したのは、私と同じ辛い思いを家族にさせたくなかったからなんです。
病気を通して、当たり前と思っていた家族の時間が、今はとても大切なものに思えます。特別なことはできませんが、日本にいる時間は家族のために使いたいですし、「今この時」を大事に生きていきたいと思っています。
フローダイバーターは、まさに私の希望の光でした。そうした治療法があり、信頼できる医師に執刀してもらえることが、生きる希望になったのです。
他にも、出国手配をしてくれた中国人スタッフ、搭乗中に体調を気遣ってくれた客室乗務員さん、ホテルスタッフ、医師や看護スタッフ、救急隊員のみなさま、そして病院を探し続けてくれた家族など、いろいろな方に助けてもらいました。多くの方々の支えがあってこそ今があると、感謝の気持ちでいっぱいです。
以前なら、このようなインタビューは苦手で避けていたでしょう。今は、誰かの役に立てるならやってみたいと、考え方がポジティブに変わりました。私の体験談が、同じ病気を抱える誰かにとって、少しでも希望になれば、こんなに嬉しいことはありません。
今後も体調に気を付けつつ、趣味の海釣りを楽しみたいです。故郷の岐阜県は海がないですが、今は海まで10分。釣り仲間と午前中に釣りをし、釣った魚を日本料理屋さんに持ち込んで、料理をしてもらってみんなで食べる、そんな時間が楽しみなんです。せっかく中国にいるので、中国語をもっと勉強して、歴史的な地域を旅行するなど、今後も新しいことに挑戦していきたいと思います。
*上記の患者さん体験談は、実在する患者さんに対し、メドトロニックがインタビューを実施し、書き起こしたものであり、疾患および治療に対する個人の感想となっております。他の方が同じ治療を受けた場合に、必ずしも同じような治療結果を得たり、感想をお持ちになることを保障するものではなく、個人差があることを予めご了承下さい。