心不全
治療機器と共に
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治療機器と共に
監修:弘前大学医学部附属病院 教授 奥村謙先生
心臓再同期療法(CRT)機器の植え込み手術は、通常、数時間で終了します。ほとんどの患者さんは、その後、十分な回復期間を経て日常生活に戻ることができます。回復のスピードには個人差があるため、時間をかけて生活に慣れるようにしてください。
機器の植込み手術後、リードがしっかりと固定されるまで、植込み部位に近い方の腕を動かすことが制限される場合があります。
日常生活に戻ってよい時期や、注意点については、医師から十分な説明を受けてください。
監修:弘前大学医学部附属病院 教授 奥村謙先生
機器が植え込まれ、手術から回復すると、医師の指示どおりに定期的な機器の検査が必要になります。
3~4ヶ月に1度は、定期検診を受けることが推奨されます。定期検診では、電池の消耗度や機器の作動状況などをプログラマという専用装置を使って調べます。この操作は体の外側から微弱な電波を使用して通信することにより行われるため、痛みなどはまったくありません。また、定期検診のほかに、除細動の治療(電気ショック)が行われたり、原因不明の発熱が続いたり、手術した箇所に腫れを感じたりした場合は、すぐに担当医師に連絡をしてください。
まれに機器本体やリードの感染を生じることがあります。抗生物質を使ってよくなることもありますが、本体やリードを取り除く必要がある場合もあります。
リードの先端が移動したり、断線したりする場合があります。定期検診では、心電図や胸部レントゲン写真による検査、またプログラマを使ってリードに異常がないかを確認します。わずかな移動の場合には、本体の設定を変更することで対処できる場合もありますが、電池が早期に消耗して、適切な治療ができなくなるような場合には、新たにリードを入れる場合もあります。
機器は電池を使用しているため、電池量が残りわずかになった場合、交換が必要となります。交換の際は、植え込み手術の際の切開部位を再度切開し、もとの機器を取り出します。また、リードを交換する必要性についても確認します。リードを交換する際、もとのリードは抜去する場合としない場合とがあります。
また心臓の病状が変化してきた場合は、別の機能を有する機器が必要になる場合があります。機器の種類や治療内容については、医師にお尋ねください。あなたに適している治療法を医師が判断します。
手術から回復すると、日常生活に戻ることができますが、機器を植え込んだ後の生活には、術前とは違った注意が必要になります。
日常生活をどう過ごすかは、患者さんの状況に応じ、医師または看護師から指導があります。ここでは、回復後の生活に関する一般的なものをご紹介します。
毎日安静時(とくに朝起きたとき)に脈を取り、記録することを習慣づけるとよいでしょう。担当医師の指示通りに定期検診を受け、機器の作動状況などを確認しておく必要があります。CRT-P/CRT-Dに影響を与えるような大きな電気や磁力が発生する機器は避けなければなりません。
電気製品を使う場合、からだに直接電気を通すもの、外へ強い電磁波を出すものは使用を避けてください。たとえば、使用中の電磁調理器に近寄ること、体に電極を貼るタイプの治療器などは注意が必要です。家庭用医療機器、例えば電位布団、ジアテルミーは使用を避けてください。また、電気毛布などは普通に使っている限り影響を与えないと思われますが、長時間使用するものですから、心配ならば事前にふとんを温めておき、眠るときはコンセントを抜く方がよいでしょう。また、CRT-P/CRT-Dは磁力の影響を受けます。植込み部に磁石などを近づけないようにしてください。肩こり用の磁気ばんそうこうなどは使用しても構いませんが、CRT-P/CRT-Dの真上に貼るのは避けてください。
自動車やバイクのエンジンは、セルモータを回すときに大きな電流が流れ、機器に影響をおよぼす場合があります。したがって、エンジンがかかっている自動車のボンネットを開けて内部をのぞき込むような動作は避けてください。自動車の運転については、担当医にご相談ください。また、運転中は急ブレーキをかけたときにシートベルトがCRT-P/CRT-Dに強い衝撃を与える恐れがあります。あらかじめ植え込み部付近にはクッションなどをあて、強い圧迫を防ぐようにした方がよいでしょう。
お風呂やサウナはCRT-P/CRT-Dに影響を与えませんが、電気風呂(銭湯などにある湯に低周波電流が流れている風呂)は影響を与えるため注意が必要です。一般的に熱いお風呂や長湯は脈拍を上げ、心臓に負担をかけるといわれています。入浴時間は10~20分程度にしましょう。また、サウナ風呂も同様の理由であまり長く入らない方が心臓のためにもよいでしょう。
担当医師にご相談ください。基本的にはCRT-P/CRT-D が植込まれていても、旅行に問題はありません。ただし、航空機へ搭乗する際の金属探知機に機器が反応したり、影響を受けたりする場合があります。空港の係官にCRT-P/CRT-D手帳、またCRT-P/CRT-Dカードを提示してください。このカードは、海外の空港でも有効です。また、空港に関わらず、突発的な事態に備え、CRT-P/CRT-D手帳は常に携帯することをお勧めします。
CRT-P/CRT-Dは、設定により、決められた時間に動作するようプログラムされている場合があります。時差があるところに出かける時は旅行前に一度担当医師に相談した方がよいでしょう。
電気や磁石を使用する機器のなかには、その周辺にエネルギー場が発生していることがあり、そのエネルギー場によって心臓機器が正常に機能しなくなる場合があります。電気製品の周辺に発生するエネルギー場の強さは、製品によって大小さまざまです。電気製品に近づくほど、エネルギー場は強くなります。
ほとんどの電磁エネルギー場は小さく弱いため、心臓機器に影響を及ぼすことはありませんが、エネルギー場が強い電気製品(溶接機やガソリン動力チェーンソーなど)は、心臓機器が送出する治療に影響を及ぼす可能性があります。
そのほか、手術の詳細については、医師の説明を受けてください。
CRT-P(CRT-D)を植え込まれた後、患者さんには以下のものが配付されます
CRT-P(CRT-D)手帳を受けとられた際、記入されている患者さんご自身に関する情報に誤りがないかを確認してください。記入事項に誤りがある場合には、担当医師に連絡してください。この手帳は患者さんのCRT-P(CRT-D)にかかわる通院記録となります。手帳には担当医師が治療過程などの必要事項を記入しますので、定期検診の際には持参して、求められたときは提出してください。また、患者さんが植込み型の治療機器を使用していることを9カ国語で記載してありますので、外出先や旅行の際にも常に携帯されることをおすすめします。
心臓ペースメーカ・カードもしくは両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)カードはいつも所持している財布や鞄などに入れ、常に携帯してください。心臓ペースメーカもしくはCRT-Dを植込んだ病院もしくは診療科以外を受診される場合や、空港などの金属探知機を通過する際、その他、必要時にこのカードを掲示して心臓ペースメーカもしくはCRT-Dが植込まれている旨を伝える際に役立ちます。
万一、医療機器に不具合が生じた場合に事故を未然に防止するため、医療機器についての安全情報が、速やかに、かつ確実に製造会社から担当医師を経て患者さんに提供されることを目的として、医療機器登録制度(医療機器トラッキング制度)が平成7年7月1日より実施されています。この制度は、CRT-P(CRT-D)を使用されている患者さんにとって、非常に重要な制度です。この制度に関する詳細は、登録手続きの際に担当医師より渡される「あなたの健康を守るために:様式1」の表面および裏面に記載されています。登録のための様式は3種類ありますが、登録に関するすべての記入事項は、手術を受けられる患者さん(もしくは患者さんのご家族の方)の同意を前提とするため、詳しくは担当医師におたずねください。
CRT-P(CRT-D)が植え込まれた患者さんは身体障害者福祉法により、身体障害者の認定を受けることができます(平成8年9月現在)。この身体障害者の認定は原則として、患者さんご自身の申請により認定されます。申請を希望される方は、所定の申請用紙に必要事項をご記入いただき、さらに定められた医師(病院には通常、1~2名います)による身体障害者診断書を添えて、福祉事務所に提出してください。申請用紙はお住まいの地域の福祉事務所や病院のソーシャルワーカーの窓口などにあります。認定は県や政令指定都市で行われ、そこから身体障害者手帳が交付されます(都道府県や市町村により手続きが異なる場合があります)。
詳しくは入院された病院のソーシャルワーカーなどの相談窓口、または患者さん本人が居住する地域の福祉事務所におたずねください。
この表は注意の度合いを色で区分しています。
ここに記載されている電気器具は故障していないこと、適切にアースが取り付けられていること、また器具の取扱い注意事項が守られていることが前提となります。さらに表内で示す内容は、当社の製品を対象とした一般的な事項であり、他社製品で同一の影響や結果を保証するものではありません。
その他【使用上のご注意】の詳細は、各治療についての解説冊子をご覧ください。
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