糸で縫い合わせた時に結紮する。きつく締め過ぎると、組織の血流を阻害し生着(創傷治癒によって組織同士がつながること)が悪くなり、ひどい場合には壊死を起こす。
皮膚の場合は肉眼で状態を観察できるが、腹腔内は観察できないため、対応が難しくなる。消化管縫合が不十分な場合、縫合糸が吸収されて抗張力を失う2~3週間前後に縫合不全を起こし、腹膜炎を引き起こす場合がある。
締め方が緩すぎると、組織同士が離れてしまい創がつながらないことがある。
テンションがかかる離れた組織同士を寄せる場合は、相手側の組織を糸の力で引こうとすると組織が裂けてしまう事があるので、手前の組織を相手側の組織に押しつけるように距離を縮めると良い。
2回目の半結びが女結びと逆になる。両手で交互に2回半結びする。より確実な結び方であり、止血や重要な部位の結紮に使う。
同じ結び(半結紮)を同じ手で2回繰り返す。最も素早く結べる結び方。ただし、ほどけやすい欠点がある。
最初の半結び時に糸を二重に絡ませ、男結びを行う。最初の二重の糸の摩擦抵抗が大きくほどけにくいため、強い緊張のかかる組織の縫合に用いる。ただし、最初の半結びが締まりにくいので要注意。
最も基本的な結紮方法で、左右均等の力で糸を強く締める事ができる。結紮点の横ズレも少ない。重要な血管結紮などに有用。しかし、両手を用いて結紮するため、そのための空間が必要であり、結ぶ動作も大きくて時間がかかる。術野が狭い場合や急いで処理する必要がある場合は多用できない。
一方の糸を持つ手はそのままで、反対の手指だけで結ぶ。両手結びよりもさらに素早く結ぶ事ができ、手を動かす空間も少ない。
結紮箇所は状況に応じて変化し、いつも同じ手で結べるとは限らない。どのような結び方でも、左右どちらの手でも同じく結べる事が必要である。
片手結びを鉗子や持針器を用いて行う。指よりも細く長い鉗子は、かなり狭い場所でも結紮が可能。糸の長さが1cmあれば鉗子でつかむことができ、わずかな動作で済む。
ただし、鉗子で掴まれた糸にはキズがつくため強度を損なう(特にモノフィラメント)。また締める時の微妙な感触が指よりも伝わりにくいため、 重要な部位の結紮には適さない。
組織を1箇所だけ結ぶ。
太い動脈や固い組織(靱帯、腱)等では、単結紮では滑って糸が外れる可能性がある。万一のため、同一組織を複数個所(数mm間隔)で結紮する。
幅の広い組織(大網、臓器周辺の結合組織)等で、ある範囲の組織をまとめて縛る。
太い糸できつく締めれば1回で結べるというわけでもなく、1度にあまり大きくまとめて結ぶと、組織の真ん中がずれて糸が外れてしまう事もある。また、糸が太くなると組織への食い込みが弱くなり、緩んでしまう結果となる。
結紮糸が絶対に外れることがないよう、結紮する前に結紮部位に針が付いた糸を1針通し、その糸で刺通部位を結紮する。糸が組織にかかっているため、糸が外れる危険性は限りなく少ない。 固い組織や重要な血管の結紮に適している。
特に深部の結紮では、結紮点が移動すると周囲の組織がちぎれてしまい、出血・組織損傷等の原因となる。狭い術野では片手しか入らないこともあり、僅かな動きでさえも重大なリスクをもたらす。 繊細な結紮操作を習得するためには、まず初めに固定された対象物を結ぶ練習で基本操作を確認した後、ペンなど軽く動く物、ティッシュペーパーを結ぶ練習等が推奨されている。
確実な結紮のためには、原則として男結びもしくは外科結び。小さい結び目ほど緩みにくく、感染防止の点からも体積が小さい方が好ましい。糸の限界張力(切れる直前の力)を感覚として指で覚えておく事で、十分な力で確実に締める事ができる。
結紮で時間短縮できるのは、糸を持ち替えるなどの糸さばきの部分である。糸を締める時はじっくり力を込め、その後は力みを解いて素早く次の締め込みの準備をするというように、リズムよく緩急をつける事で結紮時間を短縮できる。 結紮で需要なのは「正しい姿勢、正しい方法、確実な動作」であり、繰り返し繰り返し練習する事で正しい動作が身に付き、指先だけで糸の反応や組織へ与える力等の繊細な情報を感じ取れるようになると言われる。
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