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こちらは、国内の医療従事者の方を対象に製品等の情報を提供することを目的としたサイトです。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。
あなたは医療従事者ですか?
こちらでは腹部の手術や外傷などの後、キズ跡(瘢痕)が膨らんで出っ張ってしまいお悩みの方、そしてご家族や周りの方々に向けた情報を掲載しています。ご紹介している症状や診断、治療法などはあくまで一例であり、患者さん個人によってさまざまです。気になる場合はまず主治医に相談しましょう。
腹部の内臓を取り囲む組織を「腹壁(ふくへき)」といいます。腹壁は何層もの筋肉やその周りの筋膜(きんまく)からつくられていて、腸などの臓器が体外に出ないように保護しています。ところが、腹部の手術や外傷などの後、そのキズ跡(瘢痕(はんこん))が膨らんで出っ張ってしまうことがあります。この状態を、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアといいます(図1)。
腹部の手術では、キズを閉じるときに腹壁を縫合(ほうごう)します。しかし、緊急手術など全身の状態があまり良くない場合、呼吸器疾患・糖尿病・肥満などの併存疾患がある場合、あるいは腹部の手術後にキズが感染してしまった場合は、縫合した組織の接着(癒合(ゆごう))が弱くなってしまいます。その際、筋肉を包みこんでいる筋膜が離れてしまうことにより隙間が生じ、そこから腹部内臓脂肪や腸などが脱出します。この隙間を「ヘルニア門」といいます(図1)。
立ったり、腹圧(ふくあつ)がかかったり(立つ、咳をする、排便のためいきむ、など)したときに膨らみが大きくなり、仰向けに横になると元に戻ることが多いです。症状がない場合も多く見受けられますが、痛みや便秘を伴うことがあります。
腹壁瘢痕ヘルニアは、腹部手術の約10-20%に発生するといわれています*1。ただし、報告によって、国・地域・年齢層・原因と考えられる腹部手術・手術後の観察期間・ヘルニアの定義などが異なるため、正確な発症頻度は分かっていません。
ほとんどの場合は、診察室において立ったり腹圧をかけたりすることで診断されます。ただし、症状を伴わないものでも、腹部CT検査で「腹筋の高さよりも腹部内臓脂肪や腸が上に出ている」所見があれば、画像的にヘルニアと診断されます。
腹壁瘢痕ヘルニアは、自然に治ることはありません。ヘルニアバンド(ベルト)で脱出を抑える方法もありますが、治療とはいえません。現時点では、手術が唯一の治療法です。
ただし、すべての腹壁瘢痕ヘルニアが手術の対象となるのではありません。例えば、次にあげるような場合に手術を考慮します。
すなわち、ヘルニアの大きさではなく、ヘルニアのためにどれだけ困っているかという症状が手術適応を判断する指標になります。
手術の方法は、大きく2通りあります。従来から行われている開腹手術(かいふくしゅじゅつ)と、近年発達してきている腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)です。最近では、ロボット支援下手術を導入している施設もあります。
日本では、年間約9,000人の患者さんが腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術を受けています。そのうち、約40%が腹腔鏡下手術です*2。
開腹手術・腹腔鏡下手術それぞれの模式図を示します(図2)。開腹手術・腹腔鏡下手術とも、ヘルニア門を縫合したうえで補強材料であるメッシュを敷くことが標準的となってきています。
メッシュを置く場所によって、”Onlay(筋膜の上)”、”Retromuscular/retrorectus(筋肉群/腹直筋(ふくちょくきん)の後面)”、”Intraperitoneal(腹腔内)”と呼ばれていますが(図3)、それぞれにメリットやデメリットがあるのが現状です。
術式を選択するうえで、術後合併症の頻度・手術時間・入院日数・痛みの程度・ヘルニアの再発率などが重要となりますが、それぞれの術式のあいだで差があるという報告と、大きな差はないとする報告とが混在しています*3,4,5。今後も調査を続けていくべき課題といえますが、現時点では、ヘルニア門の位置や大きさ、外科医や施設での経験によって術式が決定されているようです。
腹壁瘢痕ヘルニア修復手術にみられやすい合併症として、出血、血腫(けっしゅ)、セローマ(液体の溜まり)、腹部臓器の損傷、腸閉塞などが挙げられます。また、長い期間痛みが続く「慢性疼痛(まんせいとうつう)」をきたすこともあります。
手術には、必ずメリットとデメリットがあります。手術を受ける前に、主治医の先生とよくご相談してください。
手術に使用されるメッシュの材質は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂です。メッシュには網目状のスリット(隙間)があり、ここに自分自身の組織が入り込んで生着することで、強い組織になります。メッシュは永久に体内に残りますが、生体に害はありません。
メッシュはある程度縮むことが報告されています。
メッシュに細菌が付着すると、感染をきたすため、メッシュの除去を必要とする場合があります。
免責事項
本サイトの内容は、医師の診察に代わるものではありません。病状や治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。